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さて、「CAMRの胎動-解題!実用理論辞典」シリーズの続きで、今回は運動学習(その2)です。
まずは、論文を見てみましょう。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆
人は運動学習において「何を学んで」いるのだろうか?筋の活性化などのプログラムでないとしたら・・・
システム理論では、「運動戦略」が学習されるということになるのだろう。運動戦略とは、運動システムを構成する様々な下位システムを協調させる規則のようなものである。少し具体的な例で考えてみる。何人かのグループで「本を作る」場合を考えてみよう。一人のリーダーが、自分を含め他のメンバー全員の行動予定表をみっちり作り、行動予定表からずれていないか常に観察し、思い通りにいくように指示を出し続ける、といったやり方はあまり現実的ではない。普通、グループの一人一人は自律的な存在である。一人一人の趣味や特技はもちろん、その人の持つ生活基盤も違っている。従って自分の思い通りに事を運ぼうとするリーダーはよく存在するが、その思惑通りに事が運ぶ事はまれである。
これは人間という存在がかなり独立して振る舞うからである。つまり他人の思い通りにはなかなか振る舞わない。各人にはそれぞれの希望や夢がある。各人それぞれに、振る舞いを決定するためのルールがある。たとえば一人は、実際に発表したい作品がある。他の一人は皆とわいわい楽しみたいと思っているだけかもしれない。一人はグループの他のメンバーに好意を持っているのかもしれない。そういった人達の集まりにとって、たまたま「本を作る」という目標はとても「価値」のある課題となっている。そしてこの課題を達成するためにはやはりいくつかの規則が存在する。たとえば「活動には休まず、参加する」とかいったものである。
この例で、人の運動システムを考えてみよう。人という存在は、何か意味のある課題を持つ。たとえば「食物を見つける」とか。その課題を達成するために個性の異なる、しかもかなり自律的なシステムが協力しあう。たとえば力を生み出す筋肉のシステムとか、ある方向への動きを可能にしたり制限したりする骨・関節のシステムとか記憶や認知の役割を持つ神経系システムとかである。それぞれのシステムは、それぞれのルールを持つ。骨・関節は重力の法則に従うし、筋は硬さを生み出すための独自のルールを持つ。それで全体として協力しあうための規則、つまり「運動戦略」が必要となる。
様々な「運動戦略」が存在すると考えられるが、いろいろ経験してみるとやはり価値のある「運動戦略」が最終的に学習されるようになると思うのだ。たとえばエネルギー効率が一番良いとか。長く立位をとっているときは、筋の作用だけによって膝を伸展位に保つよりは、膝関節の靱帯などの制限なども利用した方が楽だとか、そのためには重心線が膝の前を通るような身体のアライメントをとることだとか、そんなことだと思う。
だから運動戦略を教えられるかどうかと言えば、教えられない。患者さんの身体の状態とある環境が出会ったときにどのような運動戦略が生ずるか、わかりようがないではないか。
だが患者さんの運動戦略を変化させることはできる。私たちは患者さんの変化が好ましい方向に向かうことを期待して、いろいろな構成要素を変化させたりする。たとえば関節可動域を、筋力を、あるいは意欲などを変化させることによって、一つ一つのサブシステムの振る舞いを変えることによってである。それは最終的に全体の振る舞いを変えてしまうかもしれない。
たとえば「意欲を高める」ことは、ある運動をより高頻度に生み出すかもしれない。それは局所的な筋力を高めるかもしれない。全体的な持久力を高めるかもしれない。しかしそれは同時に運動戦略を変化させ、その変化した運動戦略がより異なった運動とその秩序を生み出す。そういった期待はできる。ただその過程を予測することはできないのである。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆
多くのセラピストが古典的な運動プログラム説から、なかなか脱することができないでいます。文献などを読んで頭では理解したつもりでも、実際の臨床場面では旧態依然としたことを繰り返している、というのはよくあることです。
CAMRでは「人は生まれながらの運動問題解決者である」という考え方を重視しています。これを理解し実践できるようになるためには、運動学習において「何を学んでいるか?」という点を腑に落ちるまで深く理解する必要があります。
僕は随分長い時間を費やしてしまいました。これからの時代の中心となる若いセラピストたちには、しっかりポイントを押さえてどんどん先に進んでいって欲しいと思います。
【引用・参考文献】
西尾幸敏:実用理論事典-道具としての理論(その1).上田法治療研究会会報, No.18, p17-29, 1995.
西尾幸敏:実用理論事典-道具としての理論(その2).上田法治療研究会会報, No.19, p1-15, 1995.
西尾幸敏:実用理論事典-道具としての理論(その3).上田法治療研究会会報, Vol.8 No.1, p12-31, 1996.
西尾幸敏:実用理論事典-道具としての理論(その4).上田法治療研究会会報, Vol.8 No.2, p76-94, 1996.
西尾幸敏:実用理論事典-道具としての理論(その5).上田法治療研究会会報, Vol.8 No.2, p120-135, 1996.
西尾幸敏:実用理論事典-道具としての理論(その6 最終回).上田法治療研究会会報, Vol.8 No.3, p120-135, 1996.
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CAMRをおススメする理由の続きです。
一つ目は、システム論をベースにしている、という点。
二つ目は、人の運動システムの作動の特徴に基づいてアプローチを構築している、という点。
三つ目は、クライエントを自律的で有能な運動問題解決者とみなしている、という点。
四つ目は、クライエントにもわかりやすい日常的な言葉を用いている、という点。
五つ目は、クライエントとの治療的関係作りも専門技術として捉えている、という点でした。
六つ目は、様々な治療手技のプラットフォームとして利用できる、という点です。
CAMR独自の技術というのもありますが、一番のセールスポイントはその治療概念だと個人的には感じています。
治療概念とは、例えばMindowsやMac OSといったコンピューターにおけるオペレーティングシステム(OS)のようなものだと考えられます。
OSをプラットフォームにして、ワードやエクセル、パワーポイントなどのソフトをスムーズに使うことができるように、CAMRの治療概念をプラットフォームにして、様々な治療手技を用いることができます。
個々の治療手技は単独で用いてもそれぞれに効果的だとは思いますが、CAMRのプラットフォーム上で利用すれば、また一味違う意味や価値が生まれる可能性があります。
現時点でも、筋膜リリースやモビライゼーション、上田法などはCAMRととても相性が良いらしく、よく用いられているようです。
逆に相性が悪い手技はというと、、、あまり思いつきません。CAMRでは、これまでに学んできたことや身につけたスキルを、異なる視点で活かすことができます。
CAMRをおススメする理由について数回にわたり書いてきました。細かいところまで踏み込むと収拾がつかなくなりますので、以下にまとめて一旦今回で終了にします。
【CAMRをおススメする理由】
1.システム論をベースにしている
2.人の運動システムの作動の特徴に基づいてアプローチを構築している
3.クライエントを自律的で有能な運動問題解決者とみなしている
4.クライエントにもわかりやすい日常的な言葉を用いている
5.クライエントとの治療的関係作りも専門技術として捉えている
6.様々な治療手技のプラットフォームとして利用できる
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一つ目は、システム論をベースにしている、という点。
二つ目は、人の運動システムの作動の特徴に基づいてアプローチを構築している、という点。
三つ目は、クライエントを自律的で有能な運動問題解決者とみなしている、という点。
四つ目は、クライエントにもわかりやすい日常的な言葉を用いている、という点でした。
五つ目は、クライエントとの治療的関係作りも専門技術として捉えている、という点です。
従来的な要素還元論のパラダイムは、デカルトによる心身二元論がベースとなっています。つまり、心と身体を分けて考えているわけです。
そして理学療法は、このうち身体について取り扱う専門領域の一つに位置付けられます。ですので、心のことは守備範囲外のことで、専門的に取り扱っていません。養成校教育においても、基礎科目としてサラッと学ぶ程度です。
しかしながら、クライエントとの関係性が治療効果にも大きな影響を与えることは、臨床家なら誰もが実感していることでしょう。
そこで「クライエントとの信頼関係が大事です」とか「人間性を磨きましょう」とか言われるのですが、後から取ってつけたように曖昧に語られる程度に留まっているのが現状です。
一方、CAMRのベースとなるシステム論のパラダイムでは、心と身体を分けたりしません。システムの構成要素は、その時その場の状況によって変化しますが、その時その場のシステムの構成要素はすべて同等に考慮されます。
ですので、臨床的に重要だと誰もが感じているクライエントとの治療的関係作りも、CAMRでは堂々と専門技術として考えられているのです。
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二つ目は、人の運動システムの作動の特徴に基づいてアプローチを構築している、という点。
三つ目は、クライエントを自律的で有能な運動問題解決者とみなしている、という点でした。
四つ目は、クライエントにもわかりやすい日常的な言葉を用いている、という点です。
専門職種の人達の間では、専門用語というものが用いられています。専門的な話をする際にはとても便利で重宝するのですが、当然のことながら世間一般の人達にはなじみの薄い言葉がほとんどです。
ここでセラピストがよくやってしまいがちなのが、クライエントに対しても専門用語を用いて話をしてしまう、ということです。気を付けてはいても、ついつい無意識のうちに口から出ていることもあるので、なかなかやっかいな問題ですね。
その点CAMRでは、重要な概念も割とシンプルな日常的な言葉で説明されています。CAMRでは人の運動システムの作動の特徴という本質的なところから考えていますので、本質というものは案外シンプルに表現され得るものなのかもしれませんね。
わかりやすいシンプルな言葉を用いることのメリットは、なんといってもクライエントにとって理解しやすいということです。
クライエント自身の運動問題についての理解が深まり、セラピストとの情報共有もやりやすくなります。そうすると増々クライエントの問題解決者としての振舞いが促進される、という好循環が生まれやすくなります。
実際にCAMRでは、過去にクライエントから提案された方法が、主要なリハビリ課題の一つとして取り入れられているそうです。
そして補足になりますが、シンプルな言葉でクライエントにとってわかりやすいということは、臨床経験の浅い方や新人セラピストにとってもわかりやすいだろうと思われます。
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