運動学習(その1)

目安時間:約 7分

\(^▽^)/
アロハ~!
しあわせ探検家の晋作です!
ご機嫌いかがですか?



さて、「CAMRの胎動-解題!実用理論辞典」シリーズの続きで、今回は運動学習(その1)です。
まずは、論文を見てみましょう。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



 シュミットによると、「訓練によって起こる持続的(半永久的)な運動変化」のことである。長い間この分野では、ある思いこみが存在していた。たとえば、「豊かなフィードバックはより良い運動学習を生む」というのものだ。特に小児の分野では、「豊かなフィードバックによって動機を高め、より適応的な行動を導き出す」とする行動療法などの影響もあって、私たちセラピストも「より早く、より適当なフィードバックをたくさん与えること」が大切と思ってきた。これは昔ソーンダイクという人が、フィードバックは接着剤のように刺激と反応を結びつけると考えて以来の伝統であるらしい。



 ところが1980年代のはじめ頃から、豊かなフィードバックは必ずしも運動学習を促進しているわけではないということがわかってきたのである。たとえばシュミットの研究では、ある運動を学習する被験者を4つのグループに分けた。1番目のグループは課題を一度練習する度にフィードバックを与えられる。2番目のグループは、5回に一度フィードバックを与えられる。3番目、4番目のグループは、それぞれ10回、15回に一度フィードバックを与えられた。その練習期間中にパフォーマンスが測定された。結果、一回毎にフィードバックが行われるものが一番パフォーマンスが改善した。また15回に一度のフィードバックのものが一番改善が見られなかった。



 「なんだ、ちっとも間違っていないじゃないか。フィードバックをたくさん与えたグループの方が結果がいいじゃない。」いや、まったくその通り。ところが、さてお立ち会い。練習終了後2日目にフィードバックなしで行われた保持テストでは、結果は逆転した。もっともパフォーマンスが良かったのは15回毎のグループ、最低は1回毎のグループだった。もし運動学習が「持続的な変化」を問題にしているのなら、1回毎のグループはちっとも運動学習をしないで、一時的な運動の改善だけを起こしていたことになる。



 シュミットによると従来運動学習の効果を測るために、練習中のパフォーマンス(その場で観察される運動)の変化を見ていたことが問題である。情報をより高頻度に、より素早く、より正確に与えること、すなわち豊かなフィードバックを与えれば、練習中のパフォーマンスは一時的に改善する。2日目の保持テストにおいて、結果の悪い1回毎のグループにフィードバックが与えられるとパフォーマンスが改善し、与えられない時には低下することがわかっている。そして、その一時的なパフォーマンスの改善がより良い運動学習につながるとも考えられてきたのである。



 フィードバックが運動学習を改善するというのは、間違いのない事実であるらしい。しかし豊かなフィードバックはパフォーマンスを著しく良くするが、運動学習を促進しない。さらにシュミットは、一時的なパフォーマンスの改善は、むしろ運動学習の妨げになるかもしれないとすら述べている。この具体的な説明については運動学習(その2)で述べる。



 つまりその場で観察される一時的な運動(パフォーマンス)の変化と、運動学習(訓練によって起きる持続的な運動変化)は、まるっきり異なった現象ということだ。これは私たちにとって新しい視点である。私たちは長い間、人の運動変化はなにもかも同じものと考えてきた。一時的な運動変化と持続的な運動変化は同じ線上にあると、当然のごとく考えていたのである。だから、一時的な運動(パフォーマンス)が変化すれば、それを繰り返すことによってやがて永続的な運動変化(運動学習)につながると考えていたのである。



 少し話がそれる。僕が新人の頃、ある研修会に参加した。そして、さる有名なインストラクターのデモンストレーションを見た。確かに、子供の姿勢や運動はその場で変化した。あたかもその場で新しい運動パターンを学習したように見えたものだ。皆は驚きのため息をもらした。その時ベテランのPTが質問した。「私の経験でいうと、訓練室を出るときには子供の運動は元に戻ってることが多いんですけど・・・」インストラクターがそれに答えて、「それは一時的な問題です。もっと長い目で見てください。一時的な変化でも繰り返し行えば、やがてその子のものになります」といった内容の説明を行った。それで質問者は納得し、その場は収まり、皆ほっとし、僕も「ああそうだな」と妙に納得したのを覚えている。でもそうではなかった。一時的な変化は、持続的な変化に結びついている可能性が低い。その二つの変化は異なったもの、それぞれ独立した現象であるかもしれないのだ。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



以前にも少しコメントした、一時的な運動変化と持続的な運動変化についてここでも触れられていますね。
この論文が書かれたのはもう25年くらい前になりますが、運動学習についてはいまだに誤解がたくさんあると思っています。
この機会に、いったい「何を学習しているのか?」ということについて一緒に考えてみましょう!



【引用・参考文献】
西尾幸敏:実用理論事典-道具としての理論(その1).上田法治療研究会会報, No.18, p17-29, 1995.
西尾幸敏:実用理論事典-道具としての理論(その2).上田法治療研究会会報, No.19, p1-15, 1995.
西尾幸敏:実用理論事典-道具としての理論(その3).上田法治療研究会会報, Vol.8 No.1, p12-31, 1996.
西尾幸敏:実用理論事典-道具としての理論(その4).上田法治療研究会会報, Vol.8 No.2, p76-94, 1996.
西尾幸敏:実用理論事典-道具としての理論(その5).上田法治療研究会会報, Vol.8 No.2, p120-135, 1996.
西尾幸敏:実用理論事典-道具としての理論(その6 最終回).上田法治療研究会会報, Vol.8 No.3, p120-135, 1996.



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マハロ~!



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